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ep7 王女は窮屈

Auteur: 根上真気
last update Dernière mise à jour: 2025-03-14 17:15:54

大理石の豪華な風呂から上がったリザレリスは、侍女たちから服を着せられるのを必死に耐えていた。

「これぐらい自分でやるし......」

「何をおっしゃいますか。記憶を失っていらっしゃるとはいえ貴女は王女殿下なのですよ」

特別侍女長のルイーズがリザレリスに注意を入れる。まるで女教師といった雰囲気の彼女は、特別にリザレリスの専用世話係に急遽抜擢されたベテラン侍女である。すでにリザレリスは彼女のことを苦手に思っていた。

「てゆーか俺...わたしって、王女殿下なんだろ?だったらあんたより偉いってことなんじゃないの?」

リザレリスがうんざりした口調で言うと、ルイーズの眼光の鋭さが一段と増した。

「だからこそなのですよ!」

「どゆこと?」

「貴女は高貴なる王女殿下。正統なるヴァンパイアプリンセス。相応しい振る舞いをしていただかないと我々が困ってしまうのです」

「ヴァンパイアプリンセスの振る舞いって、血をすすること?」

リザレリスは悪戯っぽくペロンと舌舐めずりをして見せた。そんな彼女のじゃじゃ馬っぷりに、ルイーズの表情はいかにも引き締まる。

「これから私がきっちりと仕込んで参りますので、覚悟なさってください」

「うわぁ、シャレも通じないのか」

「......なんでございましょう」

「なんでもないですよーだ。じゃ、もう服着たから部屋に戻るぞ」

「髪の毛がまだです!」

「まだやんの??」

「きちんとお手入れいたしませんとせっかくの美しいブロンドヘアーが台無しになってしまいます!」

「いいじゃん、もう寝るだけなんだし」

「今日のためだけではありません!」

「うわぁ、メンドクサイ......」

「はい!?」

「いえ、なんでもないっす......」

鬼のマナー講師とでも言わんばかりのルイーズの様相は、ますますリザレリスをげんなりさせた。

寝室に戻ってきて一人になると、リザレリスはふかふかの大きなベッドに顔からぼふんと倒れ込んだ。シーツも布団も枕も新調されていた。

「王女様って、なんか疲れるなぁ」

もぞっと寝返りを打って仰向けになり、自分の胸を触った。

「風呂入って裸を見ても全然興奮しなかった。自分の体だからなのか、女になっちゃったからなのか。自分で言うのもアレだけど、前世じゃ女好きだったのになぁ〜」

なんだか途端につまらない気分になってくる。なんなら男でも誘惑してみようか。そんなことさえ考える。

しかし、王女といっても何でもかんでも好き放題やり放題というわけではない。おまけに今のこの生活も、ディリアスの懸念通りに国が破綻してしまったならそこで終わりだ。

「てゆーか、本当にそんなに逼迫してるのか?」

にわかにリザレリスの胸に疑問が湧いてくる。少なくとも城の中の暮らしは、衣食住どれを取っても贅沢なものだった。

「城の外に、街に出てみたいな......」

リザレリスはむくりと起き上がる。時計に目をやる。時刻は九時を回っていた。あとは寝る以外やることがない。だが眠くはないし寝る気にもなれない。

「夜遊びをしまくっていた前世の血が騒ぐぜ......」

リザレリスは口元にヒヒヒと悪い笑みを浮かべると、ぬらりと立ち上がった。

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